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「時は来た。それだけだ」

 

故・橋本真也が東京ドームにおけるアントニオ猪木との一戦(タッグマッチ)を前にして、
言い放った伝説的名言。


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ときは1990
210日、新日本プロレスのビッグマッチ・東京ドーム大会のメインイベントは、


アントニオ猪木・坂口征二VS橋本真也・蝶野正洋


当時すでに全盛期を過ぎていた猪木と坂口の黄金タッグに、
これから全盛期を迎えるであろう闘魂三銃士の橋本と蝶野が挑んだ(三銃士のもうひとりは武藤敬司)。

まだ20代だった橋本と蝶野にとって、長州・藤波世代を抑えて東京ドームのメインイベントに立つのは初めて。

そんなふたりの試合前に、インタビュアーが訪れて、橋本にマイクを向けた。


 

「時は来た。それだけだ」


 

短くキレ良く緊張感のある名言だが、ここでひとつおかしなことが起きる。

隣にいた蝶野正洋が笑うのをぐっと堪える姿をカメラは捕えた。

 

あの時、蝶野はどうして笑いそうになったのか?

 

この謎こそが、この名言を伝説にまで昇華させたのです。

のちに蝶野はあの時の真相を明かした。

この日は、今では珍しいプロレスの地上波生放送。

通常であれば、インタビュアーは格下の橋本・蝶野から話を聞きにきて、最後に猪木にインタビューをするかと思っていたら、先に猪木サイドからインタビューがはじまってしまったのだ。

ここで名将・猪木は仕掛ける。

「もし負けるということがあったら、それは勝負の時の運という言葉では済まないことになると思いますが」

というインタビュアーの問いかけに、猪木は答えた。

「やる前から負けることを考えるバカがどこにいんだよ!」

猪木はインタビューの頬を張り飛ばすと、カメラに向かって叫んだ。
「出てけ!コラ!」

まさに“猪木劇場”である。

このやりとりで視聴者の心はぐっと掴まれた。やはり猪木は天才だ。


 

これをモニタで見ていた橋本と蝶野はビビる。


やっべーぞ、あっち盛り上がってる。。。


俺たちはどうすれば、さっきのインタビューを越えられるのか?

橋本は蝶野に言った。

「俺にやらせてくれ」と。

 

橋本は、さっきの猪木より過激なことをするのか?

まさかインタビュアーのスーツを破っちゃったりするのか?

 

蝶野は期待と不安を胸に、橋本に託した。

そこへ、インタビュアーがやってくる。

まずは蝶野が「潰すぞコラ!よく見とけよコラ!」と威勢のいいコメントをしたあと、
インタビュアーは橋本にマイクを向けた。

 

「時は来た。それだけだ」


 

蝶野は思った。

(え、それだけ?)

 

インタビュアーが猪木に言った「勝負の時の運ではすまない」というパートを拾ってのなかなか素晴らしいコメントだったが、蝶野はあまりにもあっさりした地味コメントについ笑ってしまったそうです。

 

こうして、この名言は“蝶野の半笑い”とセットになって、伝説となった。


真実と嘘
、真剣と悪ふざけ、シリアスと笑い、
それらが表裏一体にいっしょくたになっているのが、プロレスの魅力でもあります。

 

“蝶野の半笑い”はひとまず置いておいて、

今回、皆様がお使いになる時のポイントは、ここです。


 

「それだけだ」


 

たったひとつ、これを加えるだけで、
どんな言葉にも切実な思いを込めることができるのです。


 

例えば、


「美味い!それだけだ」

 

食レポにおける語彙のなさを、この一言が全てをカバーしてくれる魔法のフレーズ。



 

「好きです!それだけだ」

 

なんと心強い告白でしょう。理屈じゃない。それだけなんだ。
好きという気持ちが3割増しで伝わってきませんか?

 

 

「寝坊しました!それだけだ」

 

どうですか?この潔さ。

本当は寝坊じゃないのかもしれない。でも、それ以上は聞くなってこと?
様々な解釈ができる奥深さすら感じさせてくれます。



 




 

是非、みなさまも日常生活でお使いください。

もしかしたら半笑いされるかもしれませんが、そんなこと気にすることではありません。

それも含めての名言なのですから。