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2019年9月21日、読売巨人軍セリーグ制覇。

優勝の決まったこの試合、途中まで、巨人はDeNA相手に劣勢。

「おそらく今日の優勝はないな…明日の神宮に持ち越しだ」

僕を含め、おそらく多くの巨人ファンがそう思っただろう。しかし、巨人は驚異的な粘りを見せ、延長10回表、遂に逆転。裏の攻撃も抑えた巨人は、5年ぶりの優勝を果たしたのだった。


この日、僕は自宅のテレビで試合を見ていた。

 

本当に今年の巨人は「面白い」チームだった。圧倒的な戦力というほどの戦力を持っているワケではない。まさに日替わりヒーローのような形で若手が躍動をし、また、広島から移籍してきた丸、悲願のキャプテンとしての初優勝を目指す坂本、まさかのキャリアハイに近い成績を残した亀井、どん底から這い上がっての最多勝の山口、そして先日引退を発表した阿部といったベテラン勢も輝いた。また、更に面白いと思ったのが、外国人助っ人の使い方。特に昨年は自身の起用法にあからさまに不満を持っていたゲレーロが、まるで野球を始めたての少年のような顔でチームプレーに躍起になっていた。後半戦になると僕の目には綺麗なジャイアンにしか見えなくなっていたくらいだ。

見ていてワクワクするジャイアンツ。こんな感覚は何年振りだろう。ああ、そうだ。この感覚は、やはり、前にもあった。その時の監督もまた、原辰徳だったのだ。さすが、名将。復帰、即優勝なんて、さすがはジャイアンツ愛の伝道師だ。

 

そんなことを思いながらテレビを見ていた。そして、ゲームセットの瞬間を迎えた。大喜びでマウンドに駆け寄る選手たち。ああ、この光景は何度見てもいい。

そして、カメラがベンチの原監督を映す。

その時、僕は目を疑った。

原監督が、あの何度も優勝を経験している名将が、号泣していたのだ。

人目を憚らず涙を流し続ける彼は、そのまま胴上げをされる。宙に舞う回数は現役時代の背番号と同じ8回だ。

そして彼は観客席に向かう途中、一番の古株選手である阿部の元へ行き、肩を抱いて何かを囁いた。すると、阿部の目が一気に潤んでいった。ついでにそれを見ていた僕の目も。

 

僕は誤解をしていた。原辰徳はさすがだ。人心掌握術にも長け、戦術も細かい。選手も安心してプレーしている。名将にとっては当たり前に出来ることなのだと。そんなはずはない。彼は今年も苦しんだ。プロとプロがぶつかる世界に簡単な年などあるはずがないのだ。

そして、僕は忘れていた。原辰徳という男は、甘いマスクの裏に、とても激しい情熱を持っている男だということを。

そして、僕は思い出した。…彼が、僕にとって初めての「ジャイアンツのヒーロー」であったことを。

次回、#2原辰徳(後半)は、少年の挫折と4番サード原のお話。